発達障害の人たちの悩みの一つは、相手の心やその場の雰囲気(空気)を読めないことであり、それが周りの人たちをいら立たせてしまうことです。
しかし、その悩みは発達障害の人の側だけにあるのではありません。
周りにいる健常者の側にも悩みがあって、それは、発達障害の人たちの言動を先読みできないという悩みです。
通常、私たちは誰に対しても、相手はこういうふうな返答をしてくるだろうとか、こういうような行動をとるだろうと予想をしています。
たとえば、私がこんなことを言ってもあの人はうなづいて聞いてくれるだろうとか、あの人に言ったら私の意見にこんな言い方で反対してくるだろう、などです。
あるいは、朝、私が挨拶をしたら、相手も挨拶をしかえしてくれるだろう、と予想をしています。
実際に少しはずれることがあっても、たいていは自分が予想した範囲内に納まっているので、対応できないことはありません。
だからこそ安心していられます。
しかし発達障害の人たちは、人が予想している範囲を越えた言動をすることがあるので、周りにいる人たちがすぐに対応できなくて一瞬かたまってしまうのです。
でもそれは、何気なく生きている私たちがいかに型にはまった考えの中で生きているか、あるいは、いかに型にはまったコミュニケーションの仕方のなかで生きているかを教えてくれるものであり、私たちがもっと人に対して優しさと懐の深さをもって接しなければならないこと、さらに人間への理解を深めていかなければならないことを教えてくれます。